カクテルは、大きくわけて2種類に分けられます。
小さめのグラスで短時間で飲むショートカクテルか、大きめのグラスで時間をかけて飲むロングカクテル。
ロングカクテルには、材料(お酒・フルーツ・甘味・炭酸など)の組み合わせ・つくり方・グラスによってスタイルで分類されることがあります。
今回はショートカクテル・ロングカクテルの違いと、どんなスタイルのカクテルがあるのか、スタイルの由来について紹介します。
目次
ショートカクテルとロングカクテル
カクテルは大きく2つの分類にわけられています。
それが、ショートカクテルとロングカクテルです。
バーテンダーがお客様の注文を聞くときも、ショートとロングどっちがいいのか?と考えます。
ショートカクテル
ショートカクテルは、足のついた小さめのカクテルグラスで提供されることが多いです。
意味はその名の通り、短い時間で飲むタイプのカクテル。
基本的にグラスに氷が入っていないため、時間が経つとすぐにぬるくなり、つくった当初の味でなくなるのが早いため、なるべく早めに飲んだ方がいいと言われています。
炭酸水やジュースなどの割材はあまり使用しないため、アルコール度数は高いものが多くあります。
例)マティーニ・ダイキリ・マルガリータなど
ロングカクテル
ロングカクテルは、大きめのグラスに氷が入って提供されることが多いです。
意味はその名の通り、長い時間をかけて飲むタイプのカクテル。
基本的に氷が入っているため、時間をかけてもぬるくなりにくく、量も多いのでゆっくりと飲むのに適しています。
炭酸水やジュースなどの割材の量が多く、アルコール度数はショートカクテルよりも低く、飲みやすいです。
例)ジントニック・ジンフィズ・ハイボールなど
バーでよく見かけるスタイル
ロングカクテルのタイプには、色々な種類のスタイルがあります。
使用する材料・つくり方・グラスによって分類されており、そのスタイルがカクテルの名前につけられることも多いです。
一般的によくバーでも注文されるスタイルを紹介します。
フィズ/Fizz
フィズで最も有名なのはジンフィズです。
炭酸がはじける音が「Fizz」のように聞こえたということでこの名が名付けられました。
お酒と柑橘系の果汁、砂糖をシェイクしてタンブラーに注ぎ、炭酸水で満たしてつくられます。
- 起源:19世紀末
- 国:アメリカ
- 材料:酒(スピリッツorリキュールなど)+柑橘系の果汁+砂糖+炭酸水
- 技法:シェイク・ビルド
- グラス:タンブラー
例)ジンフィズ・バイオレットフィズ・カカオフィズ
コリンズ/Collins
有名なのはトムコリンズというカクテルで、元々はオールドトムジンという「甘口のジン」+レモンを炭酸水で割って飲まれていました。
時代の流れが辛口のジンを求める傾向にあり、オールドトムジンではなく、ドライジンが普及していきます。
本来はビルドでつくられていましたが、ドライジンでトムコリンズをつくる際に砂糖(甘味)を加えるため、ビルドでは混ざりにくいのでシェイクしてつくられるようになりました。
そのため、トムコリンズの後につくられたラムコリンズやジョンコリンズなどのコリンズスタイルのカクテルは、砂糖を加えてシェイクしてつくられています。
ここまで説明すると、「フィズ」のスタイルと同じですが、一つだけ違うのはコリンズグラスを使用すること。
コリンズグラス・・・細長く背の高いグラス
タンブラー・・・底が平らで円すい形のグラス
オールドトムジン・・・製造過程で砂糖を加えてつくられるジン
- 起源:19世紀半ば
- 国:イギリス
- 材料:スピリッツ+柑橘系の果汁+砂糖+炭酸水
- 技法:ビルド・シェイク
- グラス:コリンズグラス
例)トムコリンズ・ラムコリンズ・ジョンコリンズ
クーラー/Cooler
クーラーの意味は、その名の通り冷やすもの。
清涼感を求めて作られたスタイルで、フィズと構成は似ていますね。
違うのは、砂糖(甘味)は使う場合と使わない場合があり、割材はジンジャエールもしくは炭酸水だということ。
時代の変化とともに、ワインクーラーのようにスピリッツ・リキュールではないものを使用してもクーラーと名前がつくこともあるようです。
- 起源:19世紀末
- 国:アメリカ
- 材料:酒(スピリッツorリキュール)+柑橘系の果汁+(砂糖)+ジンジャエールor炭酸水
- 技法:ビルド・シェイク
- グラス:タンブラー
例)ボストンクーラー・ハイランドクーラー・ワインクーラー
リッキー/Rickey
リッキースタイルのカクテルは、このカクテルを初めて飲んだお客様の名前が「カーネル・ジム・リッキー」だったことから名づけられました。
スピリッツとライムもしくはレモンをしぼり、炭酸水で割るシンプルでさっぱりとした味わいです。
- 起源:1900年頃
- 国:アメリカ
- 材料:スピリッツ+ライムorレモン+炭酸水
- 技法:ビルド
- グラス:タンブラー
例)ジンリッキー・ウォッカリッキー
サワー/Sour
サワーとは、「酸っぱい」という意味で、日本ではレモンサワーやカルピスサワーなどがありますが、カクテルで使うサワーとは異なります。
酒と柑橘系の果汁(レモンジュースがほとんど)、甘み(砂糖やシロップ)でつくるものが、サワースタイルです。
ちなみに現在は、そこに炭酸水を加えたり、卵白を加えてつくられることもあります。
- 起源:18世紀
- 国:イギリス
- 材料:酒(スピリッツorリキュール)+柑橘系の果汁+砂糖+(卵白)
- 技法:シェイク
- グラス:サワーグラス(カクテルグラス)・オールドファッションドグラス(ロックグラス)
例)ウィスキーサワー・ブランデーサワー・コアントローサワー
ハイボール/Highball
ハイボールというと、ウィスキーと炭酸水でつくるカクテルという認識が強いですが、厳密にはお酒を炭酸飲料水で割ったものを「ハイボール」スタイルといい、ウィスキーソーダのことだけではないんです。
- 起源:19世紀末
- 国:アメリカ
- 材料:スピリッツ+炭酸飲料
- 技法:ビルド
- グラス:タンブラー
例)ウィスキーハイボール・キューバリブレ
バック/Buck
バック(Buck)とは、「雄鹿」という意味で、キックのある飲み物だということで名づけられました。
お酒とレモンもしくはライム、ジンジャエールでつくるカクテルのほとんどが、最後に「バック」とつきます。
例外として、モスコミュールの場合はウォッカバックとは言いません。
- 起源:20世紀初頭
- 国:イギリス
- 材料:スピリッツ+柑橘系果汁(レモンorライム)+ジンジャエール
- 技法:ビルド
- グラス:タンブラー
例)ジンバック・ラムバック・テキーラバック
コラーダ/Colada
コラーダはスペイン語で「洗濯、洗濯する」という意味ですが、ピニャコラーダの意味は「裏ごししたパイナップル」になります。
colarという単語に「濾す(こす)」という意味が含まれているので、そこから連想されたと考えられます。
コラーダスタイルのカクテルは、お酒・フルーツジュース・ココナッツミルクが加わり、南国気分のトロピカルカクテルがほとんどです。
ステアやシェイクでつくられたり、グラスも大きめのゴブレットやビアグラス、カクテルグラスなどでつくられることもあり、比較的自由なスタイルです。
- 起源:1950年頃
- 国:プエルトリコ
- 材料:酒(スピリッツorリキュール)+フルーツジュース+ココナッツミルク
- 技法:シェイクorステア
- グラス:ゴブレット・ビアグラス・カクテルグラスなど
例)ピニャコラーダ・マリブピニャコラーダ
ジュレップ/Julep
ジュレップの語源は、ペルシャ語のグルアーブ(Gluab)で、グル=「バラ」、アラーブ=「水」です。
昔、バラの花でつくった化粧水、ローズウォーターがアラビア語圏に広まり、ジュラブ(Julab)と呼ばれます。
15世紀に英語にとりいれられ、18世紀にアメリカに「ジュレップ(Julep)」として伝わりました。
特に南部で芳香性のある飲み物のことをジュレップと呼ぶようになり、ミントの清涼感のあるカクテルのことを指すようになりました。
ミントが入るカクテルは、基本的にクラッシュアイスでつくられます。
- 起源:18世紀末
- 国:アメリカ
- 材料:スピリッツ+ミント+砂糖+水or炭酸水
- 技法:ビルド
- グラス:ジュレップカップ
- 氷:クラッシュアイス
例)ミントジュレップ
スリング/Sling
スリングとは、ドイツ語の「Schlingen」=飲み込むという言葉から、「飲み物を飲む」という意味合いで名づけられたといわれています。
スリングは当時、お酒・砂糖・水でつくる簡単なカクテルで、ジンスリングはジンを希釈(薄める)して、甘く飲みやすくしたものでした。
ちなみにバーテンダーの偉人「ジェリー・トーマス」は、仕上げに新鮮なナツメグで仕上げたそうです。
ジンスリングの他に、有名なのが「シンガポールスリング」というカクテルですが、このカクテルは現代風にアレンジしたもので、シェイクしてつくられます。
- 起源:19世紀初頭
- 国:アメリカ
- 材料:スピリッツ+砂糖+水orお湯
- 技法:ビルド・シェイク
- グラス:タンブラー
例)ジンスリング・シンガポールスリング
色々なスタイルのカクテルを楽しもう!
カクテルは大きく2種類に分けられ、ショートカクテルとロングカクテルがあるということ。
ロングカクテルには、材料・つくり方・グラスによって様々なスタイルがあるということを紹介しました。
時代とともに味の好みは変わり、カクテルも現代風に再構成されることがあります。
是非、いろいろなカクテルを飲んでみてください!